傷物語「冷血篇」を観た

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こんなに荘厳で、そして切ない物語が最初にあったとは…!

原作を読んでいない自分にとっては物語シリーズ、これでようやく繋がった

阿良々木暦の忍に対する献身の理由、残りの人生全て(不老不死ならば永遠)を彼女に捧げるというあの想いはここから初まったのかとようやく理解できた

そしてこの物語を、映画として体験できてとても良かったと思っている




感動した勢いで長々とあらすじ書いちゃいました、記憶頼りなので若干オリジナルのセリフと異なっているかも知れません

※物語シリーズ全般に対するネタバレありです!


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キスショットの四肢を全て取り戻した阿良々木暦

…え?

じゃあギロチンカッター、本当にあれで終わり??

いいとこ無しじゃん!!

一体彼のどの辺がエピソードやドラマツルギーよりも強かったのか、けっきょく分からずじまいだった

それだけ怪異の王、キスショットの血が強すぎるということなのか

ここで阿良々木も当然の疑問にぶち当たり、それを忍野メメに問う

あの3人弱すぎじゃね?

阿良々木が強すぎるというのなら、さらにその主人たるキスショットはなぜ不覚をとったのか?

実際に3人と戦ったからこそキスショットの「油断していた」という言い訳が、全く真実味を持たなくなったのだ

負けようがないのである

その疑問の答えは忍野の胸ポケットから出てきた!


それは紅く光るキスショットの「心臓」

なんと忍野は、3人が戦う以前にキスショットから心臓を抜き取っていたのだと

それも彼女に気付かれることなく…

あなたはゾルディック家の人ですか!?

キスショットの「それに何だか、体調も悪かった」というのはこのせいだったんですね!?


正面切って戦った訳ではないのだろうが、一流の専門家、という域を脱しているような気がする

こうなると阿良々木に襲いかかろうとする3人を制したのも、臥煙伊豆湖の後ろ盾などは関係なかったのかも知れない

「血縁者は最初からいない」みたいなとても気になることを貝木泥舟が言っていたが、それってつまりどういうことだってばよ!と今更ながらやはり気になる

忍野メメの出自もいずれは明かされるのであろうか…?

それとも自分が知らないだけでいずれかの物語で既に明かされているのか?

まあでもそれは後の楽しみで☆


忍野の計画としては、自らが「4人目」の敵として阿良々木と戦う予定だったのだという

それがギロチンカッターにより阿良々木が超覚醒、人間を辞めた存在にしてしまったせいで?叶わなくなったのだ

なぜ叶わないのかは説明していないが、「適当なところでわざと負ける」という筋書きが成立しなくなったのかも知れない

本気で殺し合いになってしまっては目的が達せられなくなるのだろう

そしてその目的は、おそらくキスショットも知っていたのだ


ていうか、単に羽川を誘拐されてしまった責任を取っただけか?そういえば追加の300万円は羽川のガード料金だった


仕事は失敗、なので500万円もチャラ

忍野は最後に「最近お腹空かない?」と言い残して学習塾跡を去るのであった



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両手と、そして心臓を取り戻しはしゃぐキスショット

心臓の件を意にも介さぬその様子になんとなく違和感を感じる阿良々木

怒らないのはともかく、せめてどうやって抜き取られたのかは知っておかないと今後安心して生きられない筈なのだ

ともかく、人間に戻してもらう約束が果たされる時が来た

だがキスショットはその前に「話をせんか」と言い出す

話があるのではなく、ただ話がしたい



何を話そうかと迷うキスショット、選んだのは第一の眷属を失った時の話

救えず、死なせてしまった最愛の人の話からであった

吸血鬼となった人間は200年も生きると死にたくなるらしいが、彼は数年で自ら命を絶ったのだという

キスショットの目の前で…

悲愴な話ではあるが、それもずっと過去の話

退屈だったそれからの日々が、阿良々木との出会いで変わった

彼女の人生に鮮やかな色を取り戻させてくれたのだ

これはそのお礼のような昔話だった

そして、2人は思春期の躁状態のように笑いはしゃぎ合う…


そんな楽しい時間に、キスショットの方から終わりが告げられた

人間に戻る時が来たのだ


ここで阿良々木が「何か腹に入れたい」と買い出しに行くのだが、それがなかったらどういう展開になっていたのかと思う

結末はかなり変わっていたかも知れない

そう考えると何か運命じみたものが2人を導いていたような想像もできるし、忍野の「お腹空かない?」で誘導されたという可能性もある

キスショットとの別れを惜しみつつ、それでもきちんとお別れを言おうと買い出しから帰った阿良々木は、それを見てしまった

いや、見させられた

それは人間=ギロチンカッターを喰らうキスショットの姿

まるでサバンナの光景のようにナマの人間が食い散らかされている

唖然とする阿良々木に、赤く塗れたキスショットの口元が言う

メガネで三つ編みの「携帯食」は持って来んかったのか?



言うまでもなく羽川翼のことである

ひとしきり動揺した後、阿良々木はやっとの事で

「人間を、食べちゃダメだろ…?」

と間抜けなことを言い、

「じゃが従僕よ、食わねば死んでしまうぞ」

と答えるキスショットを残し、その場を逃げ出すのだった

考えれば分かるはずのことを、あえて遠ざけていた報いが突然やってきたのだ


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人類の敵を復活させてしまった阿良々木暦は、己のしたことを後悔し、しかし既にどうしようもないことに気付いて、遂に自らの死を決意する

あの3人は人類の側の正義だった、それに自分は敵対していたのだ

そして、取り返しのつかないことを…

別に阿良々木が死んだからとてどうなるものでもないのだが、これは責任を取るための罰なのだと

でもその前に「新学期に会おう」という約束を果たせなくなる羽川翼に対してだけはちゃんと話しておきたい

そして、再び勝手にアドレス登録されていた彼女を呼び出すのだ

場所は暗い体育倉庫

阿良々木が1人で暴れたことによるその惨状にやや驚く羽川だが、彼女は呼び出された時点で、もしかしたらそのずっと前からこの時を悟っていた

現状を打ち明ける前に、

「死んじゃだめだよ」

と自分を叱る彼女を、阿良々木は心底すごい奴だと驚嘆する

生身の肉体を持ちながら、羽川は怪異以上に異常なのである

そして、死は責任を取るどころか無責任だと

自殺は罪であり、阿良々木君は罪に罪を重ねることになるんだよ、と

ではどうすれば良いかは明白であり、キスショットが人類の敵だというのなら彼女を殺すしかない

今この世でそれができるのは阿良々木暦ただ1人だけ

この後に登場する様々な専門家のことを彼らはまだ知らないのだが、知っていたとしても羽川ならばそう確信したかも知れない

これは「傾物語」のネタバレになるが、実際いつぞやタイムトラベルしたパラレルワールドで、最強の専門家3人はキスショットに滅ぼされているのだ

あれも悲しい話だった、というかあれが最も悲しい話だった

何せ、この「傷物語」を経て互いに欠かせぬものとなった2人が…と、それは後々また感想を書きたいと思う

兎にも角にも、阿良々木は羽川に諭され、キスショット討伐の意思を固めるのである

キスショットは悪くない、悪いのは自分なのだと言い聞かせ…

羽川が言うように、キスショットはただ食事をしているだけであり「人間が牛さんや豚さんを食べるのと一緒」なのだ

人間が倫理的にどうこう言えることではないのである

この辺り「寄生獣」のクライマックスを思い起こした人は多いと思う


「君は悪くなんかない………でも……ごめんよ…………。」


君は悪くない

君を責められない

しかし、人間は自らを守らねばならないのである




ちなみにこの後「戦闘中にキスショットのおっぱいに目を奪われないように」との名目でこれでもか!というレベルの変態おっぱい嬲りを阿良々木が行う

全くもってこの状況にはそぐわないのだが、それを承知でここにぶっ込んできたということが何となく窺え、皆もとても楽しんでいたようだ

これでこの三部作それぞれにそれぞれの羽川エロシーンが登場したことになる


鉄血篇→パンモロ

熱血篇→パンモロ&パン脱ぎ

冷血篇→おっぱい

帰り際に後ろの女子たちが「おっぱいシーン最高だった!」と話していたことからも、やはり必要不可欠なシーンなのだろう

個人的には、もう少し小ぶりだったらと…



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超高速の火の玉となって、阿良々木のいる場所に飛んできたキスショット

…完全体のキスショットは人外中の人外であり、怪異というよりはドラゴンボールの住人に近い

なんらかの隙を突かない限り、やはり忍野メメでも適わなそうに思える

そんなキスショットと対峙する阿良々木暦

キスショットも阿良々木の心を知っており、これから殺しあうことは既に前提条件なのだ


だが、先刻恋人同士のようにはしゃぎあった仲でもである

殺しあうということは、主観的には「殺す」ということ

殺せばキスショットは死に、殺せば阿良々木が死ぬ

そんな悲劇に一歩を踏み出すため、2人には互いの立場を確認する必要があった

それはすなわち、存在自体を認めないということ

阿良々木はキスショットを人類の敵、死すべき存在だと宣言し、キスショットは人類を「食料」だと定義する

心が通じ合っているからこそ可能なやり取りであるだけに、2人の心情を思うと切ない

この時「我の元へ帰れ、我と共に永劫を生きよ」とキスショットが提案したのは、おそらく本心からだったと思う

叶うことはないと知りながらも、もし共に生きれたなら…と切なる願いを抱いていたのではないか



しかしやはり、戦いを避けることはできなかった

この後2人は、妖怪変化もかくやという出鱈目バトルを展開するのである


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どこに意識の本体があるのか不明だが、頭をもいでも首から生えてきて復活してしまう

本体などはなく、彼らは血の量だけで生死が決まるのかも知れない

おそらく人の目には止まらぬスピードで、互いのカラダを幾多にも分解させつつ展開される超バトル

特に頭のもぎあいは、壮絶ながらも滑稽な笑いを誘っているようだった


そんな中で一瞬、キスショットは羽川を冷酷な眼で睨みつける

これは阿良々木に選ばれた女への憎しみか、それともこの後の展開を危惧していたのか…

壊しては復活、壊れては再生と、まるで夢の中のファンタジーバトルのように2人は互いの肉体を殺し合う

キスショットの具現化能力により放たれた火球は、周囲をまるで生きているかのような炎で蹂躙し…

…最近創作物全般に登場する「キャラクター強さランク」みたいなのを考えていて正直キスショットは中間よりやや下程度の順位だったのだが、これを観たら訂正せねばなるまい

殺せないじゃん!



だが、遂に転機が訪れた

キスショットの胸に突き刺さる阿良々木の胴体、2人はまるで十字架のように繋がり最期の時を迎えようとしていた

そんな、完全に2人だけの世界に突然侵入してきたのは、誰あろう羽川翼

何かを見落としていることに気付いた、と叫ぶ羽川の真意を悟ったキスショットは「黙れ!」と一括

この女の聡さを十分理解しているのだろう

なおも喋ろうとする羽川の肉体を雲散霧消、させるところを阿良々木が代わりに塵となり、残った頭でキスショットの首筋に噛みつくのである!

吸血により赤子から高校生の肉体へと進化する阿良々木と、それと反比例するかのようにしぼんでいくキスショットの肉体

ここで勝負あったはずのラストを、阿良々木の言葉が止める

「お前はどうやって、僕を人間に戻すつもりだったんだ」

羽川の乱入を受けて生まれた疑問だろう

主が死ねば吸血鬼の呪縛は解け、阿良々木は人間に戻る

おそらく羽川にはそれ以外の手段が思いつかない

羽川に思いつかないということは、それ以外にはないのだ

そしてそれしか手がないのだとしたら、そもそもハートアンダーブレードは…キスショットは、最初から阿良々木に殺されるつもりだったのではないか?






想像もしていなかった事態に愕然とする阿良々木

キスショットの「最初から人間に戻すつもりなどなかった」という言い訳は、羽川はおろか、もはや阿良々木にも通じない

そもそもキスショットが死にかけた時点で彼の決心は迷うと思うのだが、そこにきてこの真実である

もう、殺せる筈がない…

隠すことを諦めたキスショットは自らの目的を、つまり「死地を探して日本に来た」、と真実を話しだす

彼女は死ぬつもりだった、第一の眷属と過ごしたこの国で

だからあえて手加減したのかは不明だが、忍野メメに、「ドラマツルギー」「エピソード」「ギロチンカッター」の3人に不覚を取り、望み通り死ぬはずだったのだ

だが、いざこれから死ぬとなると途端に恐ろしくなってしまったのだと

500年生きた命を失いたくない、もっと生きていたい…

死ねば死にたいと思う気持ちすら消えてしまう、直面してみるとこれほど恐ろしいことはない

普段は考えないことだが、死の間際になってそのゾーンに入ったのだろう

これは人間でいう「死症候群」であり、元は人間だったというキスショットがそうなるのも自然のことである

そんな絶望の最中に現れたのが阿良々木暦であり、あろうことか彼は自分の命を投げ出して彼女を救ってくれたのだ

キスショットは、それまで人間にも吸血鬼にも助けられたことなど一度もなかったのだという

それが、まさかこんな風に命を譲ってくれる人間がいたなんて

バケモノの自分に対し……

死にたいと願っていた自分が、そんな貴重な人間の血を吸って生き長らえようとしている


一体、自分は何をやっているのだろう――


その時彼女は「此奴のため」、自分を救ってくれた名も知らぬこの人間を生かすため、あらためて500年の命を全うしようと決めたのだ

それは、少し前まで持っていた「死にたい」と願う感情とは少し違ったのだろう

さらに阿良々木と過ごすうち、それはある種の悦びに似た自己犠牲の精神に変化していったのかも知れない

と同時に、寂しさも感じるようになっていた
と思う


手足を取り戻すたびにその時が近づいて来る

自分が死ぬ時が、阿良々木暦と永遠に別れる時…

この頃にはキスショットも阿良々木の心理を理解できるようになっていた

彼は「キスショット」を助けたのではなく、「弱っている者」を助けたのだ、と

だから自分が完全体になってしまえば、彼の献身はそこで終わるのであろうと

それが、時折見せる憂鬱な表情に表れていたような気もする

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だから本当にダメ元で、悲痛な一縷の願いを込めて、戦いの直前にあんなことを聞いたのだ

阿良々木のような人間が自分と共に生きるなど、人を喰って生きる化物になどなろう筈がない

そう知っていながらも…

あれは自分への憎しみを引き出すためだけではなく、共に生きられる億分の1の可能性を試してみた…のではないか

まあこれは原作も読んでない人間の言うことであり、ただそうあって欲しいな、という希望的憶測である



キスショットの「死にたい」と願う気持ちは固い

単に死にたいのではなく「お主のために死にたい」

もとより死にたいと願っていたものが、これでようやく納得して、満足して死ねるのである

だから頼むから殺してくれと哀願するキスショットだが、こうなってしまっては阿良々木に彼女を殺せる訳がない

そもそも阿良々木は、彼女のことを好きになっていたのだ

買い出しの帰り、別れるのが寂しい、出来ればこのままここにいてくれたら…と願っていたのだ

あの場面を見るまでは

だから例えそれが悲痛な願いであってもこればかりは二律背反、人格を2つに分けでもしない限り叶えてあげることが最早出来ない…


しかしキスショットは、もし殺さなければ1日に千人の人間を喰うと宣言する

手始めに羽川翼を

さらに阿良々木自身だって、生きていたら人間を喰わねばならなくなるのである



そこで阿良々木は全てを悟り、忍野の名を叫ぶのだ

あの男はきっと全てを見透かしていた

阿良々木がしてしまったことがどういうことなのかも、キスショットが何を望んでいるのかも、最初から知っていたのだ

こうなるであろう展開ももちろん知っていた

だから「バランス」を取るために自分を含む4人のバンパイアハンターとの戦いを仕組んだ

結局その仕事は失敗してしまった訳だが、成功していたらどういう結末になっていたのかは分からない

キスショットを殺さず、阿良々木を人間に戻す手段が他にあったのだろうか?

ともあれ最早後の祭り、今ここでできることをするしかない

叫び続ける阿良々木に応え、その姿を現わす忍野メメ

阿良々木は心から素直に切望する

何とかしてくれ……

とにかくみんなが幸せになるようにしてくれ……

しかし「みんな」の中に人類とキスショットが含まれている以上、そんなことは不可能である

それでも願わずにいられないのだ


沈黙の後、忍野は

「みんなで不幸になることなら出来る」

と訳のわからないことを言う

訳のわからない面持ちになった阿良々木に対し忍野は説明する

誰の願いも叶わない、誰も幸せにならない方法で、みんなを生かす

阿良々木暦とキスショットと人類とで、、少しずつ不幸を分かち合うのだ


まさにバランスである

阿良々木とキスショットは人を喰う吸血鬼ではなくなり、人類が食われることもなくなる

しかし人類にはキスショット復活の危険が残り、阿良々木は人間に戻れず、キスショットは……死ねないのだ…


それでも、みんな生き続けられる

普通に考えたら不死の肉体を持ちながら人を喰うこともなくなり、その上2人はずっと一緒にいられるのだ

全ての可能性を考えても不幸どころか最善の落とし所のように思うのだが、少なくとも今のキスショットはそう思わない

とにかく死にたい、今ここで阿良々木に殺されたい

お主の為に死にたい

ただでさえ死にたがっていたのに、そんな惨めな姿になってまで生き延びるなど絶対嫌だと、必死に哀願するのだ


選択権はキスショットでも忍野メメでもなく、阿良々木にある



「どうか、儂を助けると思って殺してくれ…」



殺すことが助けることだとしても、阿良々木にだって独自の心があり願いがある


命を犠牲にして自分を人間に戻そうとしてくれたキスショット、あえて憎まれながら殺されようとしてくれたキスショット

僕のために……



阿良々木は、

「僕はお前を、助けない」

そう断言し、キスショットの願いを突き放すのだ

そしてとめどなく溢れる阿良々木の涙がキスショットを濡らす


―お主、泣いておるのか…?

―これは涙じゃなくて血だ、お前にだって血は流れているだろう…!


自分のために泣いてくれた人間も、おそらく初めてだったのだろう



お互いの涙が絡み合う中、キスショットは抗うことを止め、彼女と阿良々木は永遠に一つとなったのだ――


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阿良々木暦が人を助けなかったのは、もしかしたらこれが初めてのことだったのかも知れない

ここから阿良々木の、不幸といえば不幸だが、幸せといえば幸せといえる日々が始まるのである

それはキスショットも同じであり、まあ最初は落ち込んでいたかも知れないが、ドーナッツの味なんかも知りそのうち生きていて良かったと思うようになるのである

お互い1人であれば生きるのも辛かっただろうけど、最愛ともいえる関係になった相手と常に一緒なのだ

もっとも200年で死にたくなるところを500年生きている訳だから、せいぜい数十年の人生しか歩んでいない人間には理解不能の心理があるのかも知れない



それでもやはり、前々回も書いたようにそこまで阿良々木がキスショット=忍に対して申し訳なく思う必要はないのではないかと思う

元々助けを求めてきたのはキスショットなのだから根本的原因は彼女の方にあるのだし、それは忍も分かっているはず

阿良々木に対してドロドロとした恨みもないだろう

つまり結局は、阿良々木暦の性格に起因することなのだ

思い悩む必要もないことで悩み、謝らなくていいことで謝る男なのである

死を懇願する吸血鬼を絞りカスにまで堕とし生かし続けていることは、彼にとっては十分過ぎるほど一生を捧げる理由になるのだ

もし愛おしさからくる感情というならとても良く分かるし、そういった要因も少なからずあるのだろうと思いたい



これより2人はあの風呂場のシーンに至るまで、一言もまともな口をきかない

血の交換のみが阿良々木とキスショットの会話であり、そしてそれで十分なのだ


このいきさつを知るのは阿良々木暦、忍野忍、忍野メメ、のちに登場する忍野扇、そして羽川翼の5人だけ

阿良々木はこのことを(世界外存在である我々を除き)誰にも、戦場ヶ原にも語らずずっと胸に抱いて生きていくのである

恐らくもう、人類よりもこの吸血鬼幼女の方が大切な存在になっているに違いない

つまり彼はもう、人間側の存在ではなくなったのである




こうしてお互いに「傷物」になってしまった物語、それがこの初まりの「傷物語」だったのだ


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エンディングは「鉄血篇」と同じく「étoile et toi」のデュエット・バージョン

編曲もかなり重厚なクラシックに変わっている

大人と少女が歌うこのナンバーは、恐らくは阿良々木に命を捧げようとした完全体キスショットと、果たせず生かされてしまった幼女キスショットをイメージしたものと思われる

どちらの声にもそれぞれが抱く悲哀が込められているように感じられた

死を望んだ孤独

苦悩の中、徐々に染み込んでくる情愛…

なんというか全然うまく言えないが、そんな悲哀である

ここまでの物語と、映画館という雰囲気に呑まれたのかも知れないが、心が震えてしまった

最初に書いた「映画として体験できてとても良かった」というのはそういうことである

この後に話題の「君の名は」を初鑑賞する予定だったのだが、傷物語の余韻を消したくなくて止めてしまった。。

パンフレットも勢いで鉄・熱・冷の3作分買っちゃったし、「混物語」とかいう小冊子も毎週配るらしいし、たぶんまだ何回か観に行っちゃうんだろうなあ


あとせっかくなので原作も読んでみようと思う

映画には詰め込めなかったこともあると思われ、かなり楽しみです(^。^)

















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