今日は萌え日和

カテゴリ: 寄生獣







あまりに話題だったので、ほんと今更ながら「君の名は。」を観に行った


そしてあっという間に2回観た

1回目はTOHOシネマズ日本橋で、ほぼ貸し切り状態

2回目はTOHOシネマズ新宿だったのだが、こないだ始まったIMAX上映だったせいかほぼ満席

これ、ほとんどの人が2回目以上だったのではないか?

上映後に「もう何十回も観てる知人がいるよ」と話している人がいた

この映画に限らないけど、その気持ちはわかる

例えは変だが、酒好きな人が毎日酒を呑むようなもの

あるいは、ジェットコースター好きな人が何回も乗ったりとか

つまりその人にとって幸せになれる時間を買っているのだと思えば、同じ映画を何回も見ることは全然無駄なことではないのである

むしろ酒などに比べ随分安い出費かと



超人気作となった「君の名は。」だが、自分はなるべく期待値を上げないよう気を付けながら観たので思った以上に楽しめた

そして、何故か2回目は1回目以上にちゃんと感動した

たぶんストーリーの理解度が上がったからだと思うのだが、1回目でピンと来なかった場面に「あっそうか!」と納得できた

時折挿入される「RADWIMPS」の曲も、1回目は「若者向けだな〜」と思いあまり頭に入って来なかったのが、2回目は自然にストーリーとリンクして感動を誘い「素直に感情移入すれば年齢関係ないんだな」と反省した

あと1回目は直前にビール2本を飲み、上映開始20分で尿意に襲われていたことも関係してるかも知れない


偉そうな言い方になるが、短い上映時間で完結させねばならない制約の中で、良くここまでの作品を作り上げたと思う

これをまだ何の評判もない頃、軽い気持ちで観に行けた人達の衝撃と感動が想像できた

「シン・ゴジラ」をあっという間に抜いたと聞いた時には「嘘でっしゃろ!?」と思ったものだが、これなら口コミで一気に拡がったのもうなずける

ただのSF恋愛物だと思っていると後半「ふえっ!?」てなることになり、その辺りから吊り橋効果的に感動が増幅されるのである

思いがけず感動したものは、人にも勧めたくなるものだ



というわけで前置きが長くなりましたが、今回は完全ネタバレありです

まだ観ていない人で少しでも気になってる人は、この記事は読まず是非観に行ってみてください

映像がものすごく綺麗なので、せっかくなら映画館で観ておくことをお薦めします!

もちろん好みは分かれるでしょうが、きっと観て損はないと思いますよ^_^



以下に感想まじりのあらすじを書きますが、観てない人は無論のこと、観た人も既に観ているのだから特に読む必要はないかも…。長いのです!


☆彡あらすじ☆彡


1200年に一度、地球を接近通過するティアマト彗星、その天体ショーを眺める高校生男女

いきなりこないだの「メランコリア」と被ってびっくりしたが、そんなシーンからこの物語は始まるのである

これは都会に住む男子高校生・瀧(タキ)と、飛騨の田舎町・糸守(いともり)に住む巫女の娘・三葉(みつは)の心が入れ替わるというお話

「転校生」と違うのは常に入れ替わったままという訳ではなく、眠ると入れ替わり半日を別人として過ごす、そしてまた眠ると元に戻っている、というところ

頻度は週に2度ほどらしい

普通に考えたら同じ日本なので時差はなく、片方が寝ている時間には片方もほぼ寝ている

その間に入れ替わっても寝てるだけなので、たぶん入れ替わっていることにすら気付くまい。笑

などと最初は思っていた

2人が互いの高校生活を体験しているということは夢の中ではなく「寝て起きると入れ替わっている」ということだと、途中までは思っていたのである

ひょっとしたらその通りだったのかも知れないが、後半に衝撃的事実が発覚し一概にそうとも言えなくなってしまうのである

ともあれ2人はこの入れ替わり現象を最初「リアルな夢」だと思っていたのだが、互いにその足跡をノートやスマホや体に残すうち、本当に誰かと入れ替わっているのだということに気づくのだ

まともな人間は夢を現実と思い込むことはあっても、現実を夢だと錯覚することはない

きちんと覚醒してしまえば「もしかしてまだ夢の中?」などと思うことはないのだ

なので2人は、ある程度まともではなかったと思われる

それは心が入れ替わるという超絶未曾有の現象が起きているのだから仕方のないこと

夢だと思う以外に落とし所がないのである

また、眼が覚めるとまさに夢のように、入れ替わりの記憶が薄れてゆくことにも原因があるだろう

それでも何度か繰り返すうちその不自然さに気づき、2人は遂にこれが現実であることを認識するのだ

なんかどっかの異性と本当に入れ替わっちゃってるよ!?と

そして、交換日記のような形でコミニュケーションを取り始めるのである

最初それはお互いの生活を守るためだったが、いつしか不満を漏らしつつも入れ替わりを満喫するようになってゆく

特に三葉にとっては憧れの東京生活が実現したのである

目覚める度におっぱいを揉み、性格の悪いクラスメイトに反撃し、男子からも女子からも告白される瀧

スイーツを食べまくり、バイト先のセクシーな先輩・奥寺さんと勝手に仲良くなる三葉

そんな不安定ながらも楽しい日々が、しかしある日突然終わりを告げる

入れ替わりが起きなくなったのだ

それは、瀧が憧れの奥寺先輩と(三葉の計らいで)初デートした日

そして、三葉の町で夏祭りが開かれた日―

その祭りの最中ティアマト彗星は地球に最接近、美しい天体ショーを描いたのだ



それから少し経ち、瀧は拙い記憶と自分で描いた絵を頼りに飛騨を訪れる

強引について来た友人のツカサ・奥寺先輩と一緒に

既に奥寺先輩への憧れは消えているようで、そのことを悟った奥寺はしばらく辞めていたタバコをまた吸い始めている

実は一時期、2人は瀧の気づかぬ間に両想いとなっていたのだ

それを後押しした三葉だったが、結果的に彼女の存在が瀧の気持ちを変えてしまったのである

ちなみにツカサは奥寺先輩のことが好きだったようだ

しかし今の瀧にはそんなことはどうでも良く、ただ三葉に会いたいだけ

だが調べても調べても、入れ替わった時に過ごしたあの町に辿り着けない

そしてとうとう諦めかけた時、瀧は恐るべき事実に気付かされることになる

瀧の描いた絵を見て「糸守」だと言うラーメン屋の女将さん

彼女の夫が糸守町の出身だったのだ

その名を聞いて記憶が甦り、瀧の顔に希望の色が浮かぶ

だが、そこに住む人を訪ねるのだと言う瀧に対し、夫婦は不自然に驚くのだ

奥寺先輩とツカサも気付く


「糸守って、あの『彗星』の…!?」



……あろうことか、糸守の町は3年前に壊滅していたのである

あの、美しい彗星のカケラが衝突したことによって


瀧にはその現実が理解できない

でも、彗星による大災害はニュースで見て知っていた

確かに、糸守の町は3年前に消滅したのである

じゃあ、ついこの間まで入れ替わっていたあの世界はなんだったのか?

三葉として過ごしたあの日々はなんだったのか

スマホでのやり取りを見ようとした瀧は、それらの記録が消えてゆくのを見る

全ては、夢…?

だが500人もの犠牲者名簿の中に「宮水三葉」の名を発見し、この信じられない現実が夢ではないと認識するのである

自分は3年前の三葉と、時を超えて繋がっていたのだと

様々な想いが交錯し、暫く後に瀧は思い出す

それは最後に三葉と入れ替わった時、祖母一葉・妹四葉と共に糸守神社の御神体へ「口噛み酒」の奉納に行ったこと

その御神体は巨大なクレーター中央、岩の下にひっそりと祀られていた

そのクレーターはおそらく1200年前に落ちた彗星の跡

糸守には少なくとも2度、彗星が落ちていたのだ

そして口噛み酒とは、巫女が噛んだ米を3年間放置することで生まれる酒のこと

これは実際に太古の日本で巫女や処女によって造られていたものらしいが、あくまで神事であり人間が飲んでいたかは不明である

口噛み酒の奉納が終わり、その帰りすがら一葉から「入れ替わり」を看破され、瀧は何故だか泣きながら目を覚ましたのである

一葉はその場所を「隠り世」つまり「あの世」と言っていた

そして口噛み酒は三葉の「半分」であり、隠り世から現世へと戻るにはこれを神に捧げる必要があるのだとも

ならば―

あの隠り世に行けば、そしてあの子の半分である口噛み酒を呑めば、既に名前を忘れてしまった彼女とまた逢えるのではと考えたのである

薄れてゆく記憶を頼りに辿り着いた場所には、確かにあの御神体があった

そして、自分が奉納した三葉の口噛み酒も

三葉の「半分」を飲んだ瀧は立ち上がろうとして転び、祠の天井に彗星とそのカケラを幻視するのである

そのカケラは生命の胚となり、三葉を形成してゆく

彼女の生まれてから死ぬまでの記憶を瀧に伝えるのだ

3年前の夏祭りの前日、三葉と瀧が現実世界で出会っていた記憶も

最後のビジョンは三葉の死の瞬間、そこで再び入れ替わりが起きた

そこは夏祭りの日、糸守に彗星が落ちた日の朝

祖母一葉に「あんた、三葉じゃないね」と言われた瀧は、さらに宮水家の者たちが代々入れ替わり現象を経験していることを聞かされる

巫女の一族に代々起こる入れ替わり

時を超えて、悲劇を伝えた三葉

瀧は、その全ての現象が今日この日のためにあったと思い至るのだ


意外にも彗星衝突の話を一蹴した常識人の一葉に驚きつつも、気を取り直した瀧は友人である「テッシー」と「サヤちゃん」に協力を求め、町のみんなを避難させる計画を立てるのである

着々と準備が進む中、瀧は三葉の父で糸守町町長である俊樹の元へ会いにいく

だが彗星衝突の事実を伝え、町民を避難させるよう頼む瀧(姿は三葉)を俊樹は一顧だにせず、病院に行けと言い放つのだ

瀧は自らの娘や宮水一族を蔑むような俊樹の発言に怒り、思わずネクタイを掴み恫喝してしまう

だがこのことで、俊樹は目の前にいる娘の中身が三葉ではないことに気付くのである

交渉決裂し焦る瀧は、計画をテッシーとサヤちゃんに任せ、一か八かあの場所へと向かう

その場所では三葉が、瀧の中で目覚めていた

それは隠り世の御神体、口噛み酒を飲み気を失った瀧の体である

何故瀧くんが糸守にいるのか不思議がる三葉だが、祠から出て周囲を見渡し愕然

壊滅し、荒地となったままの糸守町

ここで三葉は、自分があの時に死んだのだと気付くのである

この三葉には自分が死んだ記憶があり、つまりどの時系列にも存在していない

生きている世界から来ていない

彼女は隠り世、「あの世」から降りてきたのである

そこに3年前の三葉、すなわち瀧が自分を呼ぶ声が響く

驚き、瀧の名を呼び返す三葉

隠り世に在る2人には全ての記憶が甦っている

姿は見えないが、確かに声は聞こえる

クレーターの円周上ですれ違った2人は、立ち止まって振り返る

そこに陽は落ちかかり、カタワレ時が訪れ――


物の境界が曖昧になり、見えないものが見える時間

2人は自身の目で、ついに想い焦がれた相手の姿を見つめるのだ

瀧は瀧の中に、三葉は三葉の中に戻っている

触れ合い、実在を確かめ合い、そして普通の高校生のように語り合った

自分の「口噛み酒」を飲んでここにやって来たという瀧を変態呼ばわりする三葉は、まさかアレを実際に飲む者がいるとは思わなかったのだろう

しかもそれが瀧とは…!

さらに瀧が自分のおっぱいを揉んでいたらしいことを思い出し、それを責めてさらに恥ずかしくなり…というひとときの思春期模様である

瀧も、自分がまだ三葉を知らない時代に会いに来られても分かる訳ないだろと文句を言うが、まさか未来の瀧と入れ替わっていたなど思いもしなかったのだから仕方ない

こうしてひとしきり話した後、瀧は互いの手のひらに名前を書こうと提案する

目覚めても、忘れないように

瀧が書き、三葉が書こうとした瞬間――

カタワレ時は唐突に終わりを告げた

何度も三葉の名を叫ぶ瀧だが、手のひらにその名前を書こうとした時にはもう忘れていた

自分がここで何をしていたのかも…


このまま瀧は、三葉を思い出すことなく5年の月日を過ごして行く



一方、3年前の自分に戻った三葉は、あの日の自分をやり直すことになる

筋書きは瀧が教えてくれた

テッシー、サヤちゃんと共に計画を実行する三葉

テッシーは変電所を爆破

サヤちゃんは学校の放送室から電波ジャックし、偽の避難指示を出す

紛う方なき犯罪である!

しかし町民の殆どは3人に耳を貸さず、最終的には消防を動かさないと避難は完了しない

遂にサヤちゃんが取り押さえられ、テッシーも捕まってしまった

必死で走り、転んで傷だらけになる三葉

彼の名を忘れた自分に気付き、ふと手のひらを見る

そこには、「すきだ」の文字が


三葉はもう一度、今度は本当の娘として父に会いにいく

空では彗星が割れ――






5年後、就職活動に苦しむ瀧の姿があった

久しぶりに瀧を訪ねた奥寺先輩は、いつか行った糸守への旅を思い出す

しかし瀧には自分が何故、糸守に行ったのかが思い出せない

奥寺先輩は「君も幸せになってね」と言い残し去って行った

左手の薬指に指輪、どうやら彼女は既に結婚しているようだ

明言はされていないが、相手はツカサだったらいいと思う

幸せになる以前に、瀧には悩みがあった

自分が常に、何かを探している感じ

人なのか場所なのかもわからない何か、それを5年間探し続けているのだ

実は、その何かは導かれるようにして瀧のすぐ近くにいた

何度もすれ違いを繰り返しその度にハッと気付くのだが、お互いにその感覚の意味が分からない

そんな中ついに、並走する電車の窓に「何か」を見つけるのである

それは相手も同じであった

お互いの顔を見て、それが自分の探し求めていた人だと確信する

電車を降り、きっと相手も降りているだろうと街を走り回る瀧

そしてとうとう、神社から続く階段の上に、三葉の姿を見出すのである

あの、カタワレ時以来の邂逅

ただしそれははっきりとした記憶ではなく、あくまで「この人だ」という確信

何をどう切り出して良いかも分からない2人は、距離を縮めながらも階段途中ですれ違ってしまう

もし相手が何かを言ってくれれば…そうお互いに思っているのかも知れない

せっかく目の前にいるのに、相手もこちらを探していたのかも知れないのに……

一度は諦めかけた瀧だが、勇気を振り絞り、意を決して振り向くのだ

この機を逃したら、本当にもう2度と会えないかも知れない

伝えることはできなかったが、瀧はあのカタワレ時に「何処にいてもお前を見つけ出す」と約束している

記憶はなくとも、その誓いが体を動かしたのかも知れない



「僕は、何処かで貴女と逢ったことがある!」

振り向いた三葉は既に涙を流していて、

「私も…!」





名も知らぬ運命の人と再会した2人は、最後のピースを埋めるように尋ねるのである



「君の、名は!」





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いやすみません、長々と…これでも色々と端折ったつもりだったのですが

あらすじで全てを伝えようとするのは悪い癖かも(>_<)

まあ自分が言うまでもないが、ともかく大変感動的な物語だったということは伝わったかと思う



ーーーーー

☆彡考察とか感想とか☆彡

5ヶ月前に公開された世界的大ヒット作に今さら考察も何もないだろうが、それでは僕の気が収まらないので一応書かせていただきたい☆


☆基本情報

・立花 瀧は新宿に近いマンションで父親と2人暮らし、高校2年生

食事当番が云々と言っていたので、おそらく母親はいない

東京の高校に通いレストランでバイトをしていて、そのバイト先には憧れのセクシー女子大生・奥寺先輩がいる

主な友人はツカサと真太で、学校とバイト先が同じである

会話などから3人とも建築関連を目指しているらしい

ちなみに僕の生活圏は瀧とほぼ同じなのだが、なんら美しい思い出もなくギャップ萎えした

飛騨は聖地巡礼してみたい!


・宮水 三葉は飛騨の糸守町に住む巫女一族の長女で、高校2年生

祖母一葉、小学生の妹・四葉との3人暮らし

彼女らは宮水家に代々受け継がれた「組紐」という伝統工芸品を作っている

母二葉を病気で亡くし、父俊樹は祖母と決別し家を出て町長となった

三葉も四葉もかなりの美少女である

主な友人はテッシーとサヤちゃん

テッシーとサヤちゃんはややB線よりなカップルで、喧嘩しつつも仲が良く後に上京し結婚することになる

また、テッシーは無類のオカルト好きである


彼らの生活には青春物の元型ともいうべき表現がストレートに散りばめられており、観ていて何度か気恥ずかしくなってしまったがそれも狙いなのだろう


☆考察と感想

まず、初っ端のシーンで既に彗星割れて地上に落ちてた

1回目に観た時も「なんかアレ落ちてるっぽいな」という違和感はあったのだが、まさかそういう物語だとは思っていなかったのでスルーしてしまった

先にも書いたようにこの時点で一瞬「メランコリア」を思い出し、糸守が彗星で壊滅したことを知った時には「ほんとにメランコリアじゃん!」と思い、最後の方で描かれる衝突破壊シーンではセカンドインパクトを思い出した

ただし最初のシーンの彗星が落ちたのが現代の地球とは限らず、もしかしたら1200年前の出来事を表現している可能性も

彗星には何らかの「生命の素」が存在していると考えられており、地球の生命は彗星からもたらされたとの説もある

それが地球に落ちた場合、人間を含めた生態系にどんな影響を及ぼすかは全く予測できず、だから3年経っても糸守町は復興の兆しすらなかったのだ

もしかしたら1200年前の墜落時に地球とは全く別系統の生命体が拡散、それが宮水家に不思議な力をもたらした原因とも考えられる

「口噛み酒」を奉納後にどうするのかが不明だったが、あのクレーター中央に3年間置くことによって、そしてそれを飲むことによって巫女としての不思議な力を授かるのかも知れない

だとしたら糸守に破滅をもたらす彗星が逆に糸守を救うことになり、因果な話である

その口噛み酒を作る儀式を、三葉は妹の四葉と共に宮水神社で行った

その際に2人が巫女装束で踊るのだが、最後に蛇(龍?)が絡まったベンヅナイフみたいな2つの神具を合わせ、それが別れて下に落ちて行くという所作がある

これは「彗星が割れて落ちる」という未来を示しているように見えた

「繭五郎の大火」によって重要な文献が全て焼けてしまい、今では祭りの意味も分からなくなってしまったと一葉おばあちゃんも言っている

おそらくは1200年前から、彗星への警告は様々な形で伝えられてきたのだろう


このあと三葉と四葉はごはんを口に含んで咀嚼、袖で隠しながら升の中にとろーりと吐き出すのだ

結構な衝撃シーンであり、三葉自身もこれを嫌味な同級生たちに見られ大変落ち込むことになる

あれだけの美少女が作る口噛み酒なら飲んでみたいとも思うが、できれば吐き出されたものではなく口移しが望ましい

決していやらしい意味ではなくてね!

あ、でもそれじゃ酒になってないのか。。

現実にもあった製法だと知る前は口内細菌で発酵させるのかと思っていて、この監督すげーこと考えつくな…といろんな意味で感心したものだ

細菌を殺しちゃダメなんだからモンダミンもリステリンもNGだろうし…いやでもディープキスはできるわけだから…などと悶々と考えたり

が、調べてみるとこれは米に含まれるデンプンが唾液中のアミラーゼと反応し醸造されるものらしく、口内細菌は関係なかったのだ!

これなら大丈夫です、皆さんも安心してください(^。^)



彗星の話でした

そもそも糸守には彗星を引き寄せる何かがあるらしい

何故だか糸守に近づくと彗星の核が分裂してしまい、そして狙ったようにあの場所に落ちるのである

それは糸守の土地が持つ宿命とも考えられるし、1番最初に落ちた彗星の働きとも考えられる

物語の流れからすると、別れた彗星が再び出逢おうとする力のように思えた

だとしたら美しくも迷惑な話である

とすると「組紐」は流れる彗星を模して作られた可能性が高い

離れてまた出逢う…そのままである

一葉ばあちゃんの言う「紐の声を聴け」とは、「彗星の声を聴け」という意味だったのか

組紐には宇宙の運行が織り込まれているのだと考えると、その不思議な力に関連性が見出せる


この物語はSFというより神話に近い


トトロや、千と千尋に近い

物語の背景に人智を超えた神的力が働いている

瀧と三葉は入れ替わるべくして入れ替わり、あのような行動を取らされたのだ

それはあの2人に限った話ではなく祖母の一葉、そして母親である二葉にも及んでいる

一葉も二葉もかつて入れ替わりを経験していたという

それにより二葉と結ばれたのが俊樹だとしたら、彼が町長になったのも、二葉の死にさえも意味があったのだと思える

最終的に、俊樹は三葉と瀧の言葉を信じ町を救ったのだ

普通ならば到底信じられない話を土壇場で信じられたのは、彼の潜在意識に入れ替わりの記憶が残っていたからであろう

最初に入れ替わった瀧が俊樹の元に向かい、その正体を疑われたのにも意味があったのである

でなければ続く本当の娘の言葉を信じられなかったかも知れない

そういえば昼間のうちに町をあげての避難訓練をしていたと記事になっていたが、あれは瀧が会いに行った直後だろうか?

それにしてはクレーターから瀧が戻った時、テッシーやサヤちゃんからそんな話は出ていない

もしかしたら三葉にとって2度目の彗星落下の直前、もう一度過去が書き換えられたのだろうか…?

彗星は既に割れており、あの状況ではもう避難させても間に合わなかったようにも見えた

それに関連することだが、この三葉・瀧・テッシー・サヤちゃんによる行動は最初の夏祭りの日には当然なかった

瀧が口噛み酒を飲み、三葉の中に入った瞬間にあの日がリセットされていたのである

パラレルワールドという考え方もできるが、これはおそらく過去のやり直しだと思う

糸守の町が消滅したと知った瞬間、瀧のスマホから三葉に関するデータが失われていったことからもそれが推測できる

記事の文字全てを読むことができなかったので何とも言えないが、あの変電所爆破や放送ジャックもなかったことになっているのではないか?

テッシーやサヤちゃんや三葉は特に何もせず、結果的には町長である俊樹の一存で町が救われたことになっているのでは…?

「なかったこと」にすればタイムパラドックスは起きない

矛盾というのはつまるところ記憶の問題であり、人の意識の問題だ

人がそれを矛盾と認識しなければ、何の矛盾も生じていないのと同じなのである

プログラム自体を書き換えてしまえば、最初からそうであったかのように世界は進んでゆくのだ

入れ替わりの記憶が消えてしまうのも矛盾を防ぐためであり、この世界書き換え自体をなかったことにするためである

人が人の力で生きていく為には、神話が現実であってはならないのだ

テッシーが爆薬を扱える立場にいて、しかもオカルト好きというのも不思議な縁で仕組まれたことだろう

この物語で様々なことが上手くいくのは、そうなるように彼らが動かされているからである

これら全てを結び付けていたのが「組紐」であり、それを3年前の瀧に届けていたことが入れ替わり現象の発動条件になっていたのだと思う

あの日東京に行ったことも、広い都会で瀧と会えたことも偶然ではなかったのだ

この辺り、ちょっと涼宮ハルヒシリーズの歴史修正を思い出す

1回目を観た後は満足しながらも「都合良すぎるところもあったなー」と思っていたのが、2回目でようやくそれら全てが導かれていたことに気付けた

導いたのが神なのか、星の力なのかは分からない

瀧が祠の中で見た彗星のカケラは胚となり、三葉になった

それを思うとあの彗星は破滅と創造を起こす、まさに神のような存在である

そんな神の力も宇宙全体の法には及ばず、彗星はどうしても地球に接近して被害をもたらす

ならばせめて彼らを矛盾なく救おう…ということなのかも知れないし、町を救うことが目的ではなく破壊と創造によって神の伝承を受け継がせることこそが目的なのかも知れない

神の価値観など人間には計れないのだ

でも、個人的にはあの大きなワンちゃんが助かって良かったと思う(^。^)

俺が神ならあの子だけは救うだろうと確信する!



あらすじでも書いたが、成長した三葉と瀧は東京で何度もすれ違っている

何ならテッシーとサヤちゃんともすれ違っている

三葉は2人と友達だろうから、いずれは瀧と彼らも再会するのだろう

こんな風に何度もすれ違うのが偶然である筈がなく、当然ここにも導きの力が働いていたと思われる

何故か?

おそらく一葉も二葉も、記憶にないだけで入れ替わりの相手と結婚しているのだ

だからこそ俊樹は本来なら信じられない彗星衝突という事態を信じられたのである

宮水の伝統を繋ぐため、1200年後の未来で再び正しい方向に導くため、三葉と瀧の結婚は必要不可欠なのだ

それでも記憶を戻す訳にいかず、何とか本人たちで気付いて欲しいと導き続けたのだろう

同時間の三葉は瀧より3歳年上である

就職にしろ進学にしろ、だいぶ前に上京していた筈

というか、町民は救われたとはいえ町は壊滅しているのだから、その時点で東京に出てきていたのかも知れない

おそらくこの5年の間に何度も何度もチャンスが訪れていたに相違なく、さぞかし神もじれったい思いをしていたことだろう

まあ神的存在が直接導いていたというよりは、2人に結び付いた「組紐」の力ということなんだと思う

忘れてしまっていても会えば必ず分かる、そんな事をどちらかが言っていた

クレーターですれ違った時のように、姿すら見えなくてもそれは感じられる力

同じ時間に存在し、姿も見えるのならばいずれ必ず結ばれるのである

組紐のようにくっついては離れ、またくっついてまた離れ、そしてまたくっついたのだ

そしてもう2度と、今生で2人が離れることはないのだろう

もしかしたらそれは、ずっと太古の前前前世から結ばれ続けていた紐なのかも知れない


これからも、ずっと――



ーーーーー


と、綺麗っぽくまとめてみましたが⭐︎

公開されてから今までスルーしてきた奴が今さら何を…という感じだが、感動しちゃったのだから仕方ないのである

正直、皆が絶賛するものを自分みたいなマイノリティー野郎に楽しめるだろうか…?と不安だったのだが、人並みの感性はあるのだなと安心した

まあ同じく超ヒット作である「進撃」のように、作品自体にそれだけの力があったということだろうけど(^_^;)

尚、小説版で色々と裏設定?が補完されているらしい

特に「君の名は。 Another Side:Earthbound」では瀧・テッシー・俊樹・四葉視点の四編が収録されており、Amazonのレビューによると「鳥肌モノ」レベルだとか。。

そこまで言われたら読むしかないじゃん!

俊樹視点では避難訓練や、実際の避難行動についての謎が解けるかも知れない

瀧視点といえばおっぱいモミモミだが、これは思春期男女の入れ替わりなのである

断言するが、おっぱいだけで済むはずがない

済むはずがないのだ……


まあそこまで補完したら別レーベルになってしまうので、読みたければ薄い本かSSを待つしかない

もういっぱい出てるかw


あと、四葉視点が個人的に楽しみ(^。^)

何せお姉ちゃんが突然おかしくなってしまった妹の話である、面白くない訳がない!

でも読んだらまた映画観たくなっちゃうんだろうなあ。。





「君の名は。」を観終えて最初に思い出したのは、もう10年以上前に放映された「過去からの日記」という単発ドラマだ

世にも奇妙な物語の中の一編で、西島秀俊と、まだ有名になる前の蒼井優が出ていた

デビュー以来次作が書けずアルバイト生活をしている小説家・山岡が、古本屋でまとめ売りされていた自分の本の束に日記を見付ける

どのページにも「今日も何もいいことがなかった」とだけ書かれたその日記に何気なく「俺も同じ」と書いたところ、すぐにそれに対する返事が浮かび上がる

なんと、その手紙は3年前の世界に生きる少女・ゆりえと繋がっていたのだ

不思議な出来事に驚きながらも、それから2人の交換日記が始まる

少女は重い病気を患っていて、辛い闘病生活を続けているという…

しばらくやり取りしたのち、山岡は彼女の命が持ってあと一年であることを知る

そして山岡は「3年後の明日午後3時、病院のベンチで会おう」と約束するのだ

彼女が生き続けることを証明するために


次の日、2人は…



山岡はベンチの上で、3年前のゆりえに日記を書く


今日、君に会えたよ

ハタチの君はすごく元気だった

僕らはたくさん話をしたよ

すごく楽しくて、いつの間にか日が暮れてて…


だが3年前の同じベンチに座るゆりえは、その文字が涙で滲んでいくのに気付く…


山岡はさらに、このことをずっと信じ続けて欲しいと続け、ゆりえもそれに応えるのだ

最後の交換日記を終え、山岡とゆりえが同時に日記をベンチに置く

すると2人は、日記に置いた手のひらが誰かの手のひらと重なっていることに気付いた

お互いが横を振り向くと、そこには


2人はそのほんのひととき、3年の時を超えて繋がったのである



…この後も少し話は続き、ラストは解釈の分かれるものとなっている

自分はこれを見た時アホみたいに泣いてしまい、しばらく涙が止められなかった(もちろん1人で見てた)

君の名は。が何かに似ているとすれば、転校生というよりはこの「過去からの日記」だと思う

偶然かインスパイアかは分からないが、どちらにしても大好きな話だったのでその発展形を観れたような気がして嬉しかった(*´-`)




糸守の未来については、今回のことで少なくとも2度同じ場所に彗星が落ちたという史実が出来たので、もう1200年後の未来を案ずる必要はなくなるだろう

「繭五郎の大火」みたいな事がまたあれば別だが、それは今の情報化社会に換算すると人類滅亡クラスの大災害である筈で、彗星のカケラよりもそっちの方が案ずるべき事態である

また、1200年先の文明であれば、既に宇宙からの飛来物に対抗する手段は確立されていると思われる


しかしそれでも、宮水の人たちは入れ替わりをし続けるのだと思う

1200年の間には文明が衰退してしまう可能性もあり、そうなったら何も知らない人たちがまた糸守に住み着いてしまうかも知れない

だが最も大きな理由は、これが繰り返されてゆく結びであり途切れることはないからだ

例え糸守から離れても、宮水の女たちは愛する人、愛した人と巡り逢う運命なのである

だから何度でも何度でも、滝と三葉は結ばれるのだろう

悲劇を避けるためではなく、これからは愛の為に出逢い続けるのである


根拠は、そう考えた方が幸せな気分になれるからだ(^。^)
















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2019/08/18 管理人






















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新海 誠
KADOKAWA/メディアファクトリー
2016-06-18















































傷物語「冷血篇」を観た

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こんなに荘厳で、そして切ない物語が最初にあったとは…!

原作を読んでいない自分にとっては物語シリーズ、これでようやく繋がった

阿良々木暦の忍に対する献身の理由、残りの人生全て(不老不死ならば永遠)を彼女に捧げるというあの想いはここから初まったのかとようやく理解できた

そしてこの物語を、映画として体験できてとても良かったと思っている




感動した勢いで長々とあらすじ書いちゃいました、記憶頼りなので若干オリジナルのセリフと異なっているかも知れません

※物語シリーズ全般に対するネタバレありです!


ーーーーー


キスショットの四肢を全て取り戻した阿良々木暦

…え?

じゃあギロチンカッター、本当にあれで終わり??

いいとこ無しじゃん!!

一体彼のどの辺がエピソードやドラマツルギーよりも強かったのか、けっきょく分からずじまいだった

それだけ怪異の王、キスショットの血が強すぎるということなのか

ここで阿良々木も当然の疑問にぶち当たり、それを忍野メメに問う

あの3人弱すぎじゃね?

阿良々木が強すぎるというのなら、さらにその主人たるキスショットはなぜ不覚をとったのか?

実際に3人と戦ったからこそキスショットの「油断していた」という言い訳が、全く真実味を持たなくなったのだ

負けようがないのである

その疑問の答えは忍野の胸ポケットから出てきた!


それは紅く光るキスショットの「心臓」

なんと忍野は、3人が戦う以前にキスショットから心臓を抜き取っていたのだと

それも彼女に気付かれることなく…

あなたはゾルディック家の人ですか!?

キスショットの「それに何だか、体調も悪かった」というのはこのせいだったんですね!?


正面切って戦った訳ではないのだろうが、一流の専門家、という域を脱しているような気がする

こうなると阿良々木に襲いかかろうとする3人を制したのも、臥煙伊豆湖の後ろ盾などは関係なかったのかも知れない

「血縁者は最初からいない」みたいなとても気になることを貝木泥舟が言っていたが、それってつまりどういうことだってばよ!と今更ながらやはり気になる

忍野メメの出自もいずれは明かされるのであろうか…?

それとも自分が知らないだけでいずれかの物語で既に明かされているのか?

まあでもそれは後の楽しみで☆


忍野の計画としては、自らが「4人目」の敵として阿良々木と戦う予定だったのだという

それがギロチンカッターにより阿良々木が超覚醒、人間を辞めた存在にしてしまったせいで?叶わなくなったのだ

なぜ叶わないのかは説明していないが、「適当なところでわざと負ける」という筋書きが成立しなくなったのかも知れない

本気で殺し合いになってしまっては目的が達せられなくなるのだろう

そしてその目的は、おそらくキスショットも知っていたのだ


ていうか、単に羽川を誘拐されてしまった責任を取っただけか?そういえば追加の300万円は羽川のガード料金だった


仕事は失敗、なので500万円もチャラ

忍野は最後に「最近お腹空かない?」と言い残して学習塾跡を去るのであった



ーーーーー



両手と、そして心臓を取り戻しはしゃぐキスショット

心臓の件を意にも介さぬその様子になんとなく違和感を感じる阿良々木

怒らないのはともかく、せめてどうやって抜き取られたのかは知っておかないと今後安心して生きられない筈なのだ

ともかく、人間に戻してもらう約束が果たされる時が来た

だがキスショットはその前に「話をせんか」と言い出す

話があるのではなく、ただ話がしたい



何を話そうかと迷うキスショット、選んだのは第一の眷属を失った時の話

救えず、死なせてしまった最愛の人の話からであった

吸血鬼となった人間は200年も生きると死にたくなるらしいが、彼は数年で自ら命を絶ったのだという

キスショットの目の前で…

悲愴な話ではあるが、それもずっと過去の話

退屈だったそれからの日々が、阿良々木との出会いで変わった

彼女の人生に鮮やかな色を取り戻させてくれたのだ

これはそのお礼のような昔話だった

そして、2人は思春期の躁状態のように笑いはしゃぎ合う…


そんな楽しい時間に、キスショットの方から終わりが告げられた

人間に戻る時が来たのだ


ここで阿良々木が「何か腹に入れたい」と買い出しに行くのだが、それがなかったらどういう展開になっていたのかと思う

結末はかなり変わっていたかも知れない

そう考えると何か運命じみたものが2人を導いていたような想像もできるし、忍野の「お腹空かない?」で誘導されたという可能性もある

キスショットとの別れを惜しみつつ、それでもきちんとお別れを言おうと買い出しから帰った阿良々木は、それを見てしまった

いや、見させられた

それは人間=ギロチンカッターを喰らうキスショットの姿

まるでサバンナの光景のようにナマの人間が食い散らかされている

唖然とする阿良々木に、赤く塗れたキスショットの口元が言う

メガネで三つ編みの「携帯食」は持って来んかったのか?



言うまでもなく羽川翼のことである

ひとしきり動揺した後、阿良々木はやっとの事で

「人間を、食べちゃダメだろ…?」

と間抜けなことを言い、

「じゃが従僕よ、食わねば死んでしまうぞ」

と答えるキスショットを残し、その場を逃げ出すのだった

考えれば分かるはずのことを、あえて遠ざけていた報いが突然やってきたのだ


ーーーーー

人類の敵を復活させてしまった阿良々木暦は、己のしたことを後悔し、しかし既にどうしようもないことに気付いて、遂に自らの死を決意する

あの3人は人類の側の正義だった、それに自分は敵対していたのだ

そして、取り返しのつかないことを…

別に阿良々木が死んだからとてどうなるものでもないのだが、これは責任を取るための罰なのだと

でもその前に「新学期に会おう」という約束を果たせなくなる羽川翼に対してだけはちゃんと話しておきたい

そして、再び勝手にアドレス登録されていた彼女を呼び出すのだ

場所は暗い体育倉庫

阿良々木が1人で暴れたことによるその惨状にやや驚く羽川だが、彼女は呼び出された時点で、もしかしたらそのずっと前からこの時を悟っていた

現状を打ち明ける前に、

「死んじゃだめだよ」

と自分を叱る彼女を、阿良々木は心底すごい奴だと驚嘆する

生身の肉体を持ちながら、羽川は怪異以上に異常なのである

そして、死は責任を取るどころか無責任だと

自殺は罪であり、阿良々木君は罪に罪を重ねることになるんだよ、と

ではどうすれば良いかは明白であり、キスショットが人類の敵だというのなら彼女を殺すしかない

今この世でそれができるのは阿良々木暦ただ1人だけ

この後に登場する様々な専門家のことを彼らはまだ知らないのだが、知っていたとしても羽川ならばそう確信したかも知れない

これは「傾物語」のネタバレになるが、実際いつぞやタイムトラベルしたパラレルワールドで、最強の専門家3人はキスショットに滅ぼされているのだ

あれも悲しい話だった、というかあれが最も悲しい話だった

何せ、この「傷物語」を経て互いに欠かせぬものとなった2人が…と、それは後々また感想を書きたいと思う

兎にも角にも、阿良々木は羽川に諭され、キスショット討伐の意思を固めるのである

キスショットは悪くない、悪いのは自分なのだと言い聞かせ…

羽川が言うように、キスショットはただ食事をしているだけであり「人間が牛さんや豚さんを食べるのと一緒」なのだ

人間が倫理的にどうこう言えることではないのである

この辺り「寄生獣」のクライマックスを思い起こした人は多いと思う


「君は悪くなんかない………でも……ごめんよ…………。」


君は悪くない

君を責められない

しかし、人間は自らを守らねばならないのである




ちなみにこの後「戦闘中にキスショットのおっぱいに目を奪われないように」との名目でこれでもか!というレベルの変態おっぱい嬲りを阿良々木が行う

全くもってこの状況にはそぐわないのだが、それを承知でここにぶっ込んできたということが何となく窺え、皆もとても楽しんでいたようだ

これでこの三部作それぞれにそれぞれの羽川エロシーンが登場したことになる


鉄血篇→パンモロ

熱血篇→パンモロ&パン脱ぎ

冷血篇→おっぱい

帰り際に後ろの女子たちが「おっぱいシーン最高だった!」と話していたことからも、やはり必要不可欠なシーンなのだろう

個人的には、もう少し小ぶりだったらと…



ーーーーー



超高速の火の玉となって、阿良々木のいる場所に飛んできたキスショット

…完全体のキスショットは人外中の人外であり、怪異というよりはドラゴンボールの住人に近い

なんらかの隙を突かない限り、やはり忍野メメでも適わなそうに思える

そんなキスショットと対峙する阿良々木暦

キスショットも阿良々木の心を知っており、これから殺しあうことは既に前提条件なのだ


だが、先刻恋人同士のようにはしゃぎあった仲でもである

殺しあうということは、主観的には「殺す」ということ

殺せばキスショットは死に、殺せば阿良々木が死ぬ

そんな悲劇に一歩を踏み出すため、2人には互いの立場を確認する必要があった

それはすなわち、存在自体を認めないということ

阿良々木はキスショットを人類の敵、死すべき存在だと宣言し、キスショットは人類を「食料」だと定義する

心が通じ合っているからこそ可能なやり取りであるだけに、2人の心情を思うと切ない

この時「我の元へ帰れ、我と共に永劫を生きよ」とキスショットが提案したのは、おそらく本心からだったと思う

叶うことはないと知りながらも、もし共に生きれたなら…と切なる願いを抱いていたのではないか



しかしやはり、戦いを避けることはできなかった

この後2人は、妖怪変化もかくやという出鱈目バトルを展開するのである


ーーーーー

どこに意識の本体があるのか不明だが、頭をもいでも首から生えてきて復活してしまう

本体などはなく、彼らは血の量だけで生死が決まるのかも知れない

おそらく人の目には止まらぬスピードで、互いのカラダを幾多にも分解させつつ展開される超バトル

特に頭のもぎあいは、壮絶ながらも滑稽な笑いを誘っているようだった


そんな中で一瞬、キスショットは羽川を冷酷な眼で睨みつける

これは阿良々木に選ばれた女への憎しみか、それともこの後の展開を危惧していたのか…

壊しては復活、壊れては再生と、まるで夢の中のファンタジーバトルのように2人は互いの肉体を殺し合う

キスショットの具現化能力により放たれた火球は、周囲をまるで生きているかのような炎で蹂躙し…

…最近創作物全般に登場する「キャラクター強さランク」みたいなのを考えていて正直キスショットは中間よりやや下程度の順位だったのだが、これを観たら訂正せねばなるまい

殺せないじゃん!



だが、遂に転機が訪れた

キスショットの胸に突き刺さる阿良々木の胴体、2人はまるで十字架のように繋がり最期の時を迎えようとしていた

そんな、完全に2人だけの世界に突然侵入してきたのは、誰あろう羽川翼

何かを見落としていることに気付いた、と叫ぶ羽川の真意を悟ったキスショットは「黙れ!」と一括

この女の聡さを十分理解しているのだろう

なおも喋ろうとする羽川の肉体を雲散霧消、させるところを阿良々木が代わりに塵となり、残った頭でキスショットの首筋に噛みつくのである!

吸血により赤子から高校生の肉体へと進化する阿良々木と、それと反比例するかのようにしぼんでいくキスショットの肉体

ここで勝負あったはずのラストを、阿良々木の言葉が止める

「お前はどうやって、僕を人間に戻すつもりだったんだ」

羽川の乱入を受けて生まれた疑問だろう

主が死ねば吸血鬼の呪縛は解け、阿良々木は人間に戻る

おそらく羽川にはそれ以外の手段が思いつかない

羽川に思いつかないということは、それ以外にはないのだ

そしてそれしか手がないのだとしたら、そもそもハートアンダーブレードは…キスショットは、最初から阿良々木に殺されるつもりだったのではないか?






想像もしていなかった事態に愕然とする阿良々木

キスショットの「最初から人間に戻すつもりなどなかった」という言い訳は、羽川はおろか、もはや阿良々木にも通じない

そもそもキスショットが死にかけた時点で彼の決心は迷うと思うのだが、そこにきてこの真実である

もう、殺せる筈がない…

隠すことを諦めたキスショットは自らの目的を、つまり「死地を探して日本に来た」、と真実を話しだす

彼女は死ぬつもりだった、第一の眷属と過ごしたこの国で

だからあえて手加減したのかは不明だが、忍野メメに、「ドラマツルギー」「エピソード」「ギロチンカッター」の3人に不覚を取り、望み通り死ぬはずだったのだ

だが、いざこれから死ぬとなると途端に恐ろしくなってしまったのだと

500年生きた命を失いたくない、もっと生きていたい…

死ねば死にたいと思う気持ちすら消えてしまう、直面してみるとこれほど恐ろしいことはない

普段は考えないことだが、死の間際になってそのゾーンに入ったのだろう

これは人間でいう「死症候群」であり、元は人間だったというキスショットがそうなるのも自然のことである

そんな絶望の最中に現れたのが阿良々木暦であり、あろうことか彼は自分の命を投げ出して彼女を救ってくれたのだ

キスショットは、それまで人間にも吸血鬼にも助けられたことなど一度もなかったのだという

それが、まさかこんな風に命を譲ってくれる人間がいたなんて

バケモノの自分に対し……

死にたいと願っていた自分が、そんな貴重な人間の血を吸って生き長らえようとしている


一体、自分は何をやっているのだろう――


その時彼女は「此奴のため」、自分を救ってくれた名も知らぬこの人間を生かすため、あらためて500年の命を全うしようと決めたのだ

それは、少し前まで持っていた「死にたい」と願う感情とは少し違ったのだろう

さらに阿良々木と過ごすうち、それはある種の悦びに似た自己犠牲の精神に変化していったのかも知れない

と同時に、寂しさも感じるようになっていた
と思う


手足を取り戻すたびにその時が近づいて来る

自分が死ぬ時が、阿良々木暦と永遠に別れる時…

この頃にはキスショットも阿良々木の心理を理解できるようになっていた

彼は「キスショット」を助けたのではなく、「弱っている者」を助けたのだ、と

だから自分が完全体になってしまえば、彼の献身はそこで終わるのであろうと

それが、時折見せる憂鬱な表情に表れていたような気もする

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だから本当にダメ元で、悲痛な一縷の願いを込めて、戦いの直前にあんなことを聞いたのだ

阿良々木のような人間が自分と共に生きるなど、人を喰って生きる化物になどなろう筈がない

そう知っていながらも…

あれは自分への憎しみを引き出すためだけではなく、共に生きられる億分の1の可能性を試してみた…のではないか

まあこれは原作も読んでない人間の言うことであり、ただそうあって欲しいな、という希望的憶測である



キスショットの「死にたい」と願う気持ちは固い

単に死にたいのではなく「お主のために死にたい」

もとより死にたいと願っていたものが、これでようやく納得して、満足して死ねるのである

だから頼むから殺してくれと哀願するキスショットだが、こうなってしまっては阿良々木に彼女を殺せる訳がない

そもそも阿良々木は、彼女のことを好きになっていたのだ

買い出しの帰り、別れるのが寂しい、出来ればこのままここにいてくれたら…と願っていたのだ

あの場面を見るまでは

だから例えそれが悲痛な願いであってもこればかりは二律背反、人格を2つに分けでもしない限り叶えてあげることが最早出来ない…


しかしキスショットは、もし殺さなければ1日に千人の人間を喰うと宣言する

手始めに羽川翼を

さらに阿良々木自身だって、生きていたら人間を喰わねばならなくなるのである



そこで阿良々木は全てを悟り、忍野の名を叫ぶのだ

あの男はきっと全てを見透かしていた

阿良々木がしてしまったことがどういうことなのかも、キスショットが何を望んでいるのかも、最初から知っていたのだ

こうなるであろう展開ももちろん知っていた

だから「バランス」を取るために自分を含む4人のバンパイアハンターとの戦いを仕組んだ

結局その仕事は失敗してしまった訳だが、成功していたらどういう結末になっていたのかは分からない

キスショットを殺さず、阿良々木を人間に戻す手段が他にあったのだろうか?

ともあれ最早後の祭り、今ここでできることをするしかない

叫び続ける阿良々木に応え、その姿を現わす忍野メメ

阿良々木は心から素直に切望する

何とかしてくれ……

とにかくみんなが幸せになるようにしてくれ……

しかし「みんな」の中に人類とキスショットが含まれている以上、そんなことは不可能である

それでも願わずにいられないのだ


沈黙の後、忍野は

「みんなで不幸になることなら出来る」

と訳のわからないことを言う

訳のわからない面持ちになった阿良々木に対し忍野は説明する

誰の願いも叶わない、誰も幸せにならない方法で、みんなを生かす

阿良々木暦とキスショットと人類とで、、少しずつ不幸を分かち合うのだ


まさにバランスである

阿良々木とキスショットは人を喰う吸血鬼ではなくなり、人類が食われることもなくなる

しかし人類にはキスショット復活の危険が残り、阿良々木は人間に戻れず、キスショットは……死ねないのだ…


それでも、みんな生き続けられる

普通に考えたら不死の肉体を持ちながら人を喰うこともなくなり、その上2人はずっと一緒にいられるのだ

全ての可能性を考えても不幸どころか最善の落とし所のように思うのだが、少なくとも今のキスショットはそう思わない

とにかく死にたい、今ここで阿良々木に殺されたい

お主の為に死にたい

ただでさえ死にたがっていたのに、そんな惨めな姿になってまで生き延びるなど絶対嫌だと、必死に哀願するのだ


選択権はキスショットでも忍野メメでもなく、阿良々木にある



「どうか、儂を助けると思って殺してくれ…」



殺すことが助けることだとしても、阿良々木にだって独自の心があり願いがある


命を犠牲にして自分を人間に戻そうとしてくれたキスショット、あえて憎まれながら殺されようとしてくれたキスショット

僕のために……



阿良々木は、

「僕はお前を、助けない」

そう断言し、キスショットの願いを突き放すのだ

そしてとめどなく溢れる阿良々木の涙がキスショットを濡らす


―お主、泣いておるのか…?

―これは涙じゃなくて血だ、お前にだって血は流れているだろう…!


自分のために泣いてくれた人間も、おそらく初めてだったのだろう



お互いの涙が絡み合う中、キスショットは抗うことを止め、彼女と阿良々木は永遠に一つとなったのだ――


ーーーーーーーーーー



阿良々木暦が人を助けなかったのは、もしかしたらこれが初めてのことだったのかも知れない

ここから阿良々木の、不幸といえば不幸だが、幸せといえば幸せといえる日々が始まるのである

それはキスショットも同じであり、まあ最初は落ち込んでいたかも知れないが、ドーナッツの味なんかも知りそのうち生きていて良かったと思うようになるのである

お互い1人であれば生きるのも辛かっただろうけど、最愛ともいえる関係になった相手と常に一緒なのだ

もっとも200年で死にたくなるところを500年生きている訳だから、せいぜい数十年の人生しか歩んでいない人間には理解不能の心理があるのかも知れない



それでもやはり、前々回も書いたようにそこまで阿良々木がキスショット=忍に対して申し訳なく思う必要はないのではないかと思う

元々助けを求めてきたのはキスショットなのだから根本的原因は彼女の方にあるのだし、それは忍も分かっているはず

阿良々木に対してドロドロとした恨みもないだろう

つまり結局は、阿良々木暦の性格に起因することなのだ

思い悩む必要もないことで悩み、謝らなくていいことで謝る男なのである

死を懇願する吸血鬼を絞りカスにまで堕とし生かし続けていることは、彼にとっては十分過ぎるほど一生を捧げる理由になるのだ

もし愛おしさからくる感情というならとても良く分かるし、そういった要因も少なからずあるのだろうと思いたい



これより2人はあの風呂場のシーンに至るまで、一言もまともな口をきかない

血の交換のみが阿良々木とキスショットの会話であり、そしてそれで十分なのだ


このいきさつを知るのは阿良々木暦、忍野忍、忍野メメ、のちに登場する忍野扇、そして羽川翼の5人だけ

阿良々木はこのことを(世界外存在である我々を除き)誰にも、戦場ヶ原にも語らずずっと胸に抱いて生きていくのである

恐らくもう、人類よりもこの吸血鬼幼女の方が大切な存在になっているに違いない

つまり彼はもう、人間側の存在ではなくなったのである




こうしてお互いに「傷物」になってしまった物語、それがこの初まりの「傷物語」だったのだ


ーーーーーーーーーーーーーーー


エンディングは「鉄血篇」と同じく「étoile et toi」のデュエット・バージョン

編曲もかなり重厚なクラシックに変わっている

大人と少女が歌うこのナンバーは、恐らくは阿良々木に命を捧げようとした完全体キスショットと、果たせず生かされてしまった幼女キスショットをイメージしたものと思われる

どちらの声にもそれぞれが抱く悲哀が込められているように感じられた

死を望んだ孤独

苦悩の中、徐々に染み込んでくる情愛…

なんというか全然うまく言えないが、そんな悲哀である

ここまでの物語と、映画館という雰囲気に呑まれたのかも知れないが、心が震えてしまった

最初に書いた「映画として体験できてとても良かった」というのはそういうことである

この後に話題の「君の名は」を初鑑賞する予定だったのだが、傷物語の余韻を消したくなくて止めてしまった。。

パンフレットも勢いで鉄・熱・冷の3作分買っちゃったし、「混物語」とかいう小冊子も毎週配るらしいし、たぶんまだ何回か観に行っちゃうんだろうなあ


あとせっかくなので原作も読んでみようと思う

映画には詰め込めなかったこともあると思われ、かなり楽しみです(^。^)

















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前回に引き続き、傷物語「熱血篇」をみた


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今回はバトルシーンがちょっと良かった

同じく西尾維新氏原作「めだかボックス」でのバトルシーンはとてもワクワクしながら見ていたが、正直物語シリーズでのバトルにはそれほどそそられない

というかたいてい一方的な感じで、バトルと呼べるシーン自体がそもそも少ない

それは作者がそこに重点を置いていないからだと思うのだが、しかし今回のはちゃんとバトルしてた

どの辺が良かったのかと言えば全く勝ち目なさそうな戦いを、つい最近までただの高校生だった阿良々木が死にかけながらもこなしていく、そんな様にとても感情移入させられた

という訳で今回は「キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード」を完全体に戻すため、つまりは阿良々木暦が人間に戻るため、3人の吸血鬼ハンターと死闘を繰り広げる回

せっかく友達になった羽川への悲痛な暴言等、色々とありながらも遂に戦いが始まるのである!


・VSドラマツルギー


ドラマツルギーは吸血鬼である

ファーストコンタクトから力量差を見せつけられた阿良々木、これは致死確実だと誰もが思うような展開

だが実は、ドラマツルギーの方こそ勝ち目のない戦いに挑んでいたということが後に分かる

ミギーのように手先を刃物に変え次々と阿良々木を切り裂く、というか切断するドラマツルギー

逃げるだけしかできない阿良々木だが、最後に逃げ込んだ体育倉庫からの「投擲」で勝利をモノにする

砲丸?を何発か命中させ、最後に名前は知らないが「石ローラー」みたいなので殴ろうとする所でドラマツルギーが降参した

この頃の阿良々木にはとんでもない、まさしく人間離れしたパワーがあったらしい

また、ドラマツルギーが肉体再生に長時間かけるところを、阿良々木は戦いの最中ほんの僅かな時間で再生してしまう

その位、キスショットの血は特別なのだ

「楽な仕事じゃ」という言葉は伊達ではなかったのですね

でも最終的には「投擲」で勝てたが、素手で戦っていたら危なかったのではないか?とも思う

キスショット自身「油断」したことで瀕死の状態にまでされてしまったというが、つまりそういうことなのだろう

経験を上回るためには体力のみならず、策略も必要なのである


そんな策略を持たずに挑んだのが

・VSエピソード

ちなみに羽川とはドラマツルギー戦の直後に和解している

もう一度パンツを見せて貰い、本当の友達になったのである

その後羽川も(寝ている)キスショットと会い、伝説の吸血鬼と初対面することになる

法の通用しない相手であり、危険度としては抗争中の組事務所にふらりと遊びに行くようなものだと思うのだが(もっとか)、そんなことを普通にやっちゃう娘なのである

着替えを持ってきて貰ったり、学習塾跡の掃除をして貰ったり、エッチな本を見つかったりと、阿良々木と羽川は加速度的に親睦を深めてゆく

ちなみに2回目で気づいたが、このエッチな本を買ったのは知る人ぞ知るあの芳賀書店ではないですか!

あと全く関係ないが、羽川が阿良々木の肉体に見惚れた後に恥ずかしくて小走りするシーンの時「山田シリーズ」で陶芸家になった山田(かわうそ)に全く陶芸の才能がなく、泣きながら家を飛び出して行くシーンを思い出してしまった

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本当に全く関係ないが


こうしてまさに「友達以上恋人未満」にまで心を通じあわせた2人

それがこの戦いで裏目・表目両面に出るのだが、結果的には表目(て言葉があるのか知らないけど)なのだろう



エピソードはバンパイアハーフ

あの最も有名な吸血鬼ハンター"D"と同じダンピールである


人間からも吸血鬼からも忌み嫌われた彼は、当然ながら世を憎む性格に育ってしまった

後に分かることだがまだとても若い、少年である

巨大な十字架を超パワーで放り投げ阿良々木を攻撃するエピソードは、時おり瞬間移動のような真似をして反撃を許さない

十字架に削られた阿良々木の肉体は青白く燃えている

逃げ回るしかできず遂に観念するかという場面で、突如羽川翼から「諦めちゃだめ、相手は霧なんだから!」という声が聞こえる

驚く阿良々木だが、次の瞬間には羽川の脇腹はエピソードにより切り裂かれていた

腸を振り乱しながらくるくると回転し倒れる羽川

駆け寄る阿良々木の目の前には、明らかに致命傷を負った友達が転がっていた

死にかけても尚「しっかりしなさい、相手は霧でしょ…?」とアドバイスを送る羽川は、遂に意識を失ってしまう…

この時エピソードが言った「超ウケる」には、そんな羽川への驚愕と賛辞が含まれていた

それを声のトーンだけで表現できる声優さんも超ウケる、と思った

狼狽し絶望する阿良々木は、怒りに我を失いながらも「霧」のヒントを頼りに砂塵を舞い上がらせる

それにより消えることができなくなったエピソードへ一気に間合いを詰めると、激情に任せ首を締め上げるのだ

やはり身体能力の高さではエピソードも全く敵わないし、子供ゆえの拙さもあるのだろう

そのままエピソードを殺しかけた所を忍野メメにより止められ、阿良々木はようやく我に帰る

しかし、失われた羽川翼の命は戻らない

友達になったばかりなのに…

絶望の中で余裕じみた忍野に怒りをぶつける阿良々木だが、上手いこと誘導され追加料金300万円でヒントを貰い、自らの不死の血を羽川に捧げ傷一つ残さず完璧に治癒させるのだ

はみ出した内臓が戻ったのか、それとも新たに再生したのかはよく分からなかったが、たぶん新たに再生したのかな

そして意識を取り戻した羽川の、綺麗なお腹に顔を埋め、阿良々木は彼女の命を確かめるのであった


ここまで観ると、いかに戦場ヶ原の存在が2人にとってイレギュラーなものかが分かりちょっと切なくなる

これはこの2人がくっつくべきだろう!と、時系列順に見た者は誰もが思うのではないか

特にこの笑顔

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辛い現実から、夢ではなくて楽しい現実と出逢った笑顔

もう恋人同士といっても過言ではない幸せの予感が、羽川をこんな笑顔にしたのである

この笑顔が、この後人知れず曇ることになるのだ

ギロチンカッターに誘拐される件などではなく、戦場ヶ原ひたぎの乱入である


しかしそれは仕方がないこと、2人はお互いの気持ちに気付けなかったのだから……




・VSギロチンカッター


ギロチンカッターは人間である

にも関わらず、キスショットが言うには3人の中で最強であるらしい

そんな彼が使った手は、羽川翼を人質に取ること

卑怯である

潔いほど卑怯である

これは忍野メメにも想定外だったらしく(それともワザと?)、このせいで阿良々木は人間を捨てることになる


やめるではなく「捨てる」にしたのはあの男との差別化か

そういえばあっちも吸血鬼であった


ともあれ覚醒した阿良々木は両腕をこれまたミギーのように伸ばしギロチンカッターを急襲、と同時にあっと言う間に羽川を救出

そのまま辺り一帯を覆う植物となった彼の腕は、その中心でギロチンカッターを十字架磔の刑に処したのであった

人間を捨てたからこその力、この状態であればそもそもドラマツルギーもエピソードも相手にすらならなかっただろう



さてここで熱血編は終わるのだが、気になるのは磔にされたギロチンカッターの満足げな顔である

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なんかすごい煽っておきながら、苦悶の声すら出せずにやられた男、ギロチンカッター

ここで終わりなのであろうか…?

彼が吸血鬼を狩るのは「使命」らしい

ならばこれは、阿良々木を本物の「化物」にするための儀式だったのでは…?

とも思えてくる

じゃないとこの顔が切なすぎるよ…!



ーーーーー



待つのやだな〜と思いつつ調べたら既に「冷血篇」公開されているじゃないですか!

なんて情弱!

ギロチンカッターの真意を確かめるためにもすぐに観ようと思います(^。^)



尚、熱血篇のエンディングテーマはクレモンティーヌという人が歌う「étoile et toi」

「鉄血篇」でも羽川との出会いの場面で流れていた

いつか聴いたような切ない旋律を濃厚にして、これでもかとさらに切なくアレンジしたような曲である

阿良々木怪異化の後に流れるので、人間との決別を切なく表現したようにも思える

が、それにプラスしてキスショットのこれまでの生涯、そして「冷血編」の終局へ至る予感を暗示しているようにも感じられた

まあフランス語分からないし冷血篇も観てないので、あくまで印象である(^_^;)

一度聴いただけで頭から離れない、とてもエモーショナルな名曲だと思う

より一層「冷血篇」が楽しみになった!



















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傷物語「鉄血篇」を観た

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物語シリーズは基本アニメでだけ観てたので、一体事の始まりはなんだったのかずっと疑問だったのだが、これでようやくある程度理解ができた

といってもたまに回想シーンで出てきていたので、なんとなくは想像していた

要は、美幼女吸血鬼「忍野忍」がキスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード時代に阿良々木暦に助けられ、その際に阿良々木は吸血鬼化

助けたついでに彼女の失われた手足を取り戻すため、3人のバンパイアハンターと戦うハメになる

さらにそこへ羽川翼が絡み、人間離れした超頭脳で阿良々木を助ける…という物語らしい

と、そこまでは後のストーリーから想像できていたのだが、肝心の「なぜ阿良々木は忍に対し命を捧げるほどの想いを抱くようになったのか」がまだ分からない

いや、想いというよりは引け目?

何かを彼女にしでかしてしまった、というような

そもそも己が命を投げ出して、キスショットの命を救った阿良々木である

で、その副作用で吸血鬼になってしまったと

そこが前提条件になっている以上、そのあと何が起ころうと彼に非は無いような気がするのだが…

しかし傷物語のクライマックスで、どういういきさつか2人は殺し合うようだ

やはりというか当たり前だが、そこでそれなりの物語が展開されるのだろう

冷血篇、楽しみである(^。^)


ーーーーー


「鉄血篇」の感想としては、とにかく羽川翼との出会いがとても甘酸っぱくて初々しく、普通にときめかせてもらった

キスショットはキスショットでもちろん可愛いが、ロリコンでない身としてはやはり今回は羽川翼だろう

おっぱいがもう少し小ぶりだったら言うことなしなのだが、それは個人的嗜好である

初対面ながら既にお互いがお互いの事を結構詳しく知っているという、有名人同士の対談的な感じが面白かった

また、「友達を作ると人間強度が下がるから」発言を羽川に突っ込まれ、たどたどしく説明していたところも

友達が悲しむと自分も悲しい、友達が傷つくと自分も傷つく、それは人間の弱体化だという論理は、これよりさらに以前の時系列で起きた「老倉育」との一件から来ていることが今だから分かる

この辺り、物語がちゃんと一貫してるなあと感心する

鉄血篇では吸血鬼化も含め色々な物語が展開されたが、最も印象に残ったのは「宇宙人がいるかどうかを先に聞けーっ!!」の場面だった

羽川の情報を「宇宙人の友達から聞いた」という阿良々木に対し、「阿良々木くん友達いたの!?」と羽川が驚くことに対しての叫びだが、感動するくらい秀逸なギャグかと

何度も見返してしまったよ

そんな、プラスマイナス両方面に有名な2人の出会いが「鉄血篇」の前半

これを見る限り、吸血鬼騒ぎなんか無くても羽川は阿良々木に恋していただろうと思えた



そしてキスショットを助け吸血鬼となった阿良々木暦が、人間に戻してもらうことと引き換えに

Dramaturgie
エピソード
ギロチンカッター

の3人と戦うことを決意するのが後半

出会った時には既に手足が無かったキスショットに「儂を助けさせてやる」と言われ、一度は逃げ出しながらも思わず助けてしまう阿良々木

見ず知らずの吸血鬼に「血を一滴残らず吸う」と言われて吸わせるバカはいないと思うのだが、これが阿良々木一族の宿命らしい

この瞬間、早くもキスショットは阿良々木に特別な感情を抱いたらしい

友達は作らないが、女は一瞬で惹きつける精神的魅力があるのだ

常人には真似のできない魅力である

こうして怪異の王は、会ったばかりの人間に失われた呼び名「キスショット」で呼ぶ事を許し、従順の証として頭をなでなでさせるのであった

ーーーーー

3人との戦闘について「楽な仕事じゃ」みたいなことを言っていたキスショットだが、実際対面してみるととても勝てる気がしない阿良々木を助けたのが、忍野メメである

この時の登場シーンを見る限り忍野はかなり人間離れしていたのだが、人間なのだろうか?

まああの大きな風呂場に代表される、このアニメ特有の誇張表現なのだろうけど

3人があっさり引いたのも不思議だったが、その辺りにはあの先輩の影響力が働いているのかな?

3人がいくら強いといっても、臥煙伊豆湖や影縫余弦まで敵に回す訳にはいかないのだろう

そんなこんながあり、忍野メメは200万円の依頼料と引き換えに、2人の手助けを引き受けるのである



ここまでが「鉄血篇」

全体的にとても新鮮で面白かったが、一番印象に残っているのはやはり「宇宙人がいるかどうかを先に聞けーっ!!」である

また最初から観直そう(^。^)


















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神谷浩史
アニプレックス
2016-07-27














明けましておめでとうこざいます!

そしてめっちゃお久しぶりです!

アホみたいに忙しかったり体調を崩したりで、しばらく頭が回転してませんでした。。

今年こそは1日1投!

…は無理にしても、3日1投!を目標にガンバンなさいよ!と自分に言い聞かせてます☆

本年もどうぞよろしくお願いいたしますm(__)m



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久々の更新は進撃にあらず!

ラース・フォン・トリアー監督、脚本の映画

「メランコリア」


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です!


これはもう「バイリンガルニュース」でマミさんが話しているのを聞いて興味を惹かれ、すぐに観た

てっきり、地球滅亡が確実になった世界で何組かの人々にスポットを当て、なす術のない絶望の日々を彼らがいかに過ごしたかを描く…という、ありがちだけどあまり今までにないタイプのパニック映画かと思っていたら


確かに今までにはないタイプだったのですがっ
⬇︎


ーあらすじー


幻想と現実が入り混じるプロローグ

花嫁の憂鬱、空から落下する無数の鳥、恐怖から逃げ出す母親、恐怖に打ち克とうとする少年、それら全てを無関係に飲み込もうと進行する巨大惑星…

BGMはワーグナーの神曲「トリスタンとイゾルデ」

とてつもなく秀麗な映像であり、初見では意味がわからないだろうが、全てを理解してから見直すとその全てに意味がある(ぜんぶ分かった訳じゃないけど)

そして、プロローグは衝撃的な光景で幕を閉じる

それは幻視か現実か、この時点ではまだ分からない―




憂鬱な披露宴の明け方、花嫁は蠍座の赤い星・アンタレスが消えていることを発見する


それは時速10万㎞の速度で地球に接近する、巨大惑星の星食によるものであった

大きさは地球の数十倍で、いわゆる浮遊惑星と思われる

浮遊惑星とは太陽などの恒星系から離脱し、単体で銀河を公転している惑星のことで、大きさはたいてい木星以上(Wikipediaより)


「メランコリア(憂鬱)」と名付けられたその美しい惑星は、露骨なまでに地球へと向かう軌道を描いていた


科学者らは「接近通過」はするが衝突はしない、と見解を発表


しかし、ネット上では明らかにこれは衝突軌道であろうとの情報が溢れる


おおよそマッハ100、つまり殺せんせーの5倍の速度で大質量惑星が衝突するのだ


直径1km程度の小惑星衝突で、人類は滅亡すると言われている


それが、地球よりもでかいのである


人類どころか地球そのものの終わりであり、まさに逃げも隠れもできない


仮に魂が存在したとしても、輪廻の輪すら永久に絶たれるのだ


つまり、確実に衝突すると分かっても、それに対し何の対策も立てられないとしたら真実など発表しようがないということ


核ミサイルで軌道を変えるとか、もはやそんなレベルの物体ではないのである


宇宙ステーションも巻き込まれるだろうし、他惑星への移住も現時点では不可能だ


ちょっぴりかすっただけでも軌道がずれたり大気が奪われたりしてアウトである


そんな限りなく絶望的な世界で、鬱病の妹と、彼女の面倒をみる姉とが、これで最期になるかも知れない5日間を過ごすのである……


ーーーーー




ここから先はネタバレありなので、読む前に是非レンタルとかで観てみて欲しい

私はたまたま無料で上映していたGyaOで観たのだが、DVDを買ってもう一度観るつもりだ

ていうかこの作品のためだけにブルーレイ買うかも

できれば冒頭のプロローグと、最後の20分間位はヘッドホンやイヤホンを着け大音量で聞いてほしい

だんだんと大きくなってゆく、恐ろしい風鳴りの音を聞くことができる……


メランコリア


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観てみて欲しいとは言ったが、掛け値無しに誰もが面白いとは言えないかも知れない


まあそれはどんな作品でもそうだけど、この作品の場合は2部構成の1部目が惑星衝突とは何の関係もないヒューマンドラマになっている


それもかなり憂鬱なドラマだ


とはいえ別に悲劇的なことが起こる訳ではなく、むしろハッピーの絶頂を自らで悲劇に変えてゆくのである


これは「ジャスティン」という鬱病を患った女が主人公となって、花嫁である彼女の披露宴が姉夫婦の屋敷で催されるという話だ


ジャスティンは真っ当な人生を送れないような精神構造をしており、これは自分でもどうしようもない


それでも必死で幸せになろうと、普通になろうと努力するのだが、、、


という感じで、物語が展開されてゆく


これがおよそ一時間続くのである


興味深く深刻な話ではあるのだが、SFチックな展開を期待して観ていると「まだ?」って感じになるのは致し方ない


でもこれが、最終的に観ている者が得られる感情に深く影響を及ぼすことになるから是非我慢して観てほしい(ていうかここを読んでいるということは既に観てますよね!?)


ちなみに私は5回ほど第2部を観た後に改めて第1部を見直したのだが、最初に観た時とは全く違う情報が頭に入ってきて大変堪能できた


筋を知ったのだから当然だが、分からなかったことが分かるようになっていたのである


また、初見では何ともなかった場面で深く感動することができた(気球のシーンとか)


そこまで計算していたとしたら凄い監督だ


ちなみに彼女の姉の旦那・ジョンの役はキーファー・サザーランド、あのジャック・バウアーが演じている


ジャックなら他の全ての人類が滅んでも生き残りそうである


だが、ここでは自宅に18ホールのゴルフコースを所有するほどの大金持ちな彼が、義妹の為に自宅で披露宴を開催してあげているのだ。常識人で、とてもいい人である


なのに、ジャスティンときたら…


ただし、最初のリムジンから披露宴冒頭あたりまでは、ジャスティンは心からのハッピーな笑顔を見せていた


それを一気に鬱状態へと落としたのは母親のスピーチである

「私は教会も結婚制度も信じない、身内の結婚式などうんざりだetc…」等といった全く空気を読まない発言を聞いた直後からジャスティンの表情に陰が現れ始め、姉クレアもその事に気付いてバカな事はするなと念を押すのである


だがもう、そこからなし崩し的に行動がおかしくなってゆく


常に眠気が表れる表情、これは鬱症状の典型的パターンだ


さらにグリーンで放尿、披露宴途中で長風呂、挙げ句の果てには花婿との新婚初夜を拒否し初対面の上司の甥とバンカーで青姦…と、もうどうにも止まらない


それでも途中何度か笑顔が戻った時間があり、それはジョンからある取引を持ちかけられた瞬間、それと燃え盛る熱気球を山火事を推奨するかの如くホール上空に飛ばすイベントの時だ


気球に刺激された彼女は目を閉じ、ある幻視をする


それは宇宙の彼方、肉眼では決して見ることのできない星雲の姿

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しかも彼女はおそらく、本当にそれを見ているのである


かなり後半になって判明することだが、彼女には在る物を在るがままに知る能力がある


それがビーンズの数であれ、宇宙の果ての見えざる様相であれだ


そんな彼女によれば、生命は地球にだけ発生したものであり、他には存在しない


そしてそれは、滅ぶべき邪悪なものであると


地球にしか存在しないはずの生命に対し「邪悪」という相対的評価を与えるということは、生命の形はとらない何らかの善性が宇宙に存在するということであり、ジャスティンはそれをも感知していることになる


この辺りには監督自身の心的体験が反映されているのかも知れず、大変面白い




ともあれ、そんなこんなで憂鬱に彩られた披露宴の翌朝、空を見上げた彼女は「アンタレスがいない」と、ようやく天変地異の兆しを発見するのである






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第2部はジャスティンの姉、苦心惨憺の披露宴をぶち壊されたクレアの話


といって環境も登場人物もさして変わらず


第1部からちょっと経ち、心の病が悪化して身動きすらままならなくなったジャスティンが、クレアの家で同居し始めるところから話は始まる


この頃には惑星「メランコリア」の情報は全人類の知るところとなっており、冒頭で書いたようにその行方がネット上でも頻繁に取り沙汰されている


というか、そんな事態になったらそれ以外の話題などしていられないだろう


福島原発の報道みたく、何となくフェードアウトさせることもできない


事は地球滅亡であり、大統領もホームレスも、百獣の王も迷える子羊も、サイコパスも世紀末覇者でさえも、全ての生物が運命を共にする一大事案なのだ




そして泣いても笑っても、メランコリア最接近まであと5日…


衝突したら全てが終わるという状況に、クレアは不安を隠せない。それが普通である


衝突はしないと言い含める夫ジョンだが、それを心からは信じられずネットの情報を見て憂鬱を深めるのだ


人間、こういう時は最悪を想定するように出来ているので仕方ない


ちなみにジョンは天体観測が好きで、天文学にも詳しい男らしい


仕事は何をしているのだろう?ゴルフ場の経営だろうか?


この時点では、どっちに転ぶか科学者達にも確実な予測はできていないという状況だったことがのちに分かる


憂鬱に沈むクレアとは対照的にジャスティンは健康を取り戻し、今までにないくらい快活になってゆく


常に最悪に心身を置いてきた彼女にとって、等しく全てが終わるこの事態こそが最もしっくりいく環境なのだろう


何せこれほど姉を不安にさせているメランコリアの下、全裸で月光浴ならぬ惑星浴を愉しむくらいの幸せっぷりなのだ


地球滅亡とは、彼女にとってこの上ないハッピーエンドなのである




そして遂に、壮麗なる天体ショーの夜が訪れた


地平線から現れた青い惑星


見る間に大きくなる美しき球体


通過か、衝突か


世界は続くのか、世界が終わるのか―




やはり、結末だけは実際に観て体験してほしい


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自分は最後の方の場面でやけにリアリティーを感じたのだが、それは第1部が完全なるヒューマンドラマで、SFの要素が微塵もなかったことに起因すると思っている


鬱病に苦しむ妹、それに振り回される周囲の人々


現実にもある深刻な話だ


第2部にもその流れは引き継がれつつも、そこに地球消滅という、どんな深刻な問題も無に帰すファクターが追加されるのである


惑星メランコリアはジャスティンの精神的象徴とも言えるだろうし、自らも鬱病を煩った監督がそうした意図を含ませていたのは間違いないと思う


が、それは決して彼女の妄想の産物ではなく、現実に存在する危機でもあるのだ


何度か出てくる存在しないはずの19番ホールは、ジャスティンの妄想というよりはクレアのそれではないか?


何処にも逃げ場がないという状況で、何処でもない場所を創り出しそこに逃避したのだと


何処にもない場所であれば、メランコリアにも誰にも破壊不可能である






ジャスティンはメランコリアの接近を歓迎するかのような言動をし始め、と同時に鬱の症状は日に日に緩和してゆく


明らかに、惑星の接近が彼女に元気を与えているのだ


鬱になっている人を元気づけようと、陽気でハッピーな音楽なんかを聞かせると余計悪化すると言われている


自分もやや鬱気質を持っているが、実際気分が塞ぎ込んでいる時に陽気な音楽など絶対聞きたくもない


逆に暗く破滅的な音楽や物語を追体験することで、そうした精神状態からかろうじて抜け出られたことは何度かある


「みんな死んじゃえ」がキャッチコピーだったTHE END OF EVANGELIONには大変お世話になったものだ


そう考えると、メランコリアという死の惑星はまさに究極の逆療法なのかも知れない


そんなジャスティンと対照的に、ふつうにんげんである姉クレアの精神は死の不安に押し潰され、日に日に暗く沈んでゆくばかり…


と、こんな感じで事ここに至ってもまだSF的様相は皆無なのだが、にも関わらず確実に宇宙規模の天変地異は進行しているのである


この日常に介入した壊滅的事態が異常なリアリティーを喚起し、私の不安を凄まじく煽ってくれて、最後の40分間くらいは完全にあの世界に生きていた

また、完全に受身な物語(なす術がないので)というのも一層恐怖をそそる

見終わった後に外出したのだが、ついつい空にメランコリアを探してしまう位だった


先ほども夜の空に適度な大きさの雲が浮かんでいたのを見て一瞬ギョッとしてしまった:(;゙゚'ω゚'):


アルマゲドンでもディープインパクトでもこんな風にはならなかったので、どれほどこの作品が等身大の絶望を醸し出しているかが分かる


監督自身がそんな効果を期待して演出したのではないとしても、私にはそんなトラウマレベルの効果があったのだ


さっきの雲まじ怖かったし……



クレアは望遠鏡で見たメランコリアを「友好的」と感じたらしい

確かに友好的なのかも知れない

無事通過すればクレアにとって、衝突すればジャスティンにとって……


ちなみにメランコリアのような浮遊惑星は、我々の銀河系に数千億個存在するという

下は地球から130光年離れた場所で発見された、木製の4〜7倍の質量を持つ浮遊惑星「CFBDSIR2149」

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メランコリアじゃないですか( ゚д゚)!!


怖いけど、美しい…


しかし例え早期発見できたとしても、こんなレベルの惑星を人類にどうこうできるとは思えない

地球脱出か、妖星ゴラスのように地球そのものを逃がすしかない

また、浮遊惑星には水や大気の存在が予測されており、断熱効果でそれなりの気温を保っているとも

つまり生命体がいても不思議ではないのだ

ジャスティンはいないと言うが、「メランコリア」にも人類のような知的生命体がいたとしたら…と想像するとまた別な物語が想像できる



あゝ、できれば映画館の大スクリーンでもっと怖がりたいっ!!


あまり成功は収めなかったみたいなので難しいだろうけど。。


鬱な人ばかりを集めて再上映してくれないかな〜


☆☆☆


奇しくも今年、2017年3月5日に「2013 TX68」と名付けられた隕石が地球を接近通過する予定で、その距離は静止衛星軌道の約半分の高さだという

さらに同年9月にも接近し、その時には衝突の恐れがあるとも…

直径30メートル程だというからメランコリアには遠く及ばないが、それでもおそらく時速7〜8万㎞の速度

空中分解せずに激突したらその一帯は大惨事である

絶体絶命なメランコリアを疑似体験し、心の準備だけでもしておいて損はない…







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